相続税 ・贈与税よくあるギモン (1/2)

相続税及び贈与税において、よくある誤りやすい点について、Q&A方式で解説します。

Q1.長男に遺産のすべてを相続させる旨の公正証書遺言を作成していましたが、他の共同相続人から遺言無効訴訟が提起されている場合はどのように処理すればよいでしょうか。
仮に裁判が提起されている場合でも、確定判決があるまでは、公正証書遺言が有効の状態となっております。そのため、遺産分割協議が未了として、法定相続分で申告することは適切ではなく、公正証書遺言の通りに遺産分割がなされたものとして申告をする必要があります。のちに、確定判決等によって相続分が確定した場合、追って修正申告および更正の請求をする必要があります。

Q2.終身利用権付有料老人ホームに入居していた被相続人が死亡した場合、どこの税務署に申告すればよいでしょうか。
相続税の申告は、被相続人の死亡時の住所を管轄する税務署にすることになっております。住所とは住民票に記載された形式的な住所ではなく、実態に即して判断されますので、老人ホームに居住されていた場合は、その老人ホームの所在地が税法上適切な納税地となりますので、老人ホームの所在地を管轄する税務署に申告する必要があります。もっとも、既に自宅を管轄する税務署に申告している場合でも、税務署から問い合わせがあった際、別の税務署に申告した旨申述すれば問題ないことが多いです。なお、病院等、一時的な滞在を目的とする施設の場合、通常住所とはいえませんので、自宅(病院に入院などする前居住地)を管轄する税務署に申告する必要があります。

Q3.不動産の共有者が死亡し、相続人がいなかったため、他の共有者がその持分を取得しました。どのように処理すればよいでしょうか。
亡くなった方に相続人がいない場合、通常その財産は国庫に帰属することになりますが、共有物については、他の共有者に帰属することになっています。当該取扱いについては、民法上遺贈とみなすことになっていますので、相続税の申告対象となります(贈与税や所得税の課税対象ではありません)

Q4.生命保険金を受け取りました。相続財産として、分割対象になるのでしょうか。
生命保険金は、被保険者の死亡を保険事故として、受取人に対して保険会社から金銭が交付されるものですので、民法上の相続財産ではありません。よって、遺産分割協議の対象ではありませんし、特別受益などの特例に該当しない限り、原則的には遺留分の対象でもありません。生命保険金を取得した者が、他の相続人に代償分割として金銭を交付することはありますが、その生命保険金の取得者の他の財産の取得分を金銭交付額が超えた場合は、存在しない財産を分割したことになりますので、相続人間の贈与として贈与税の課税対象となる可能性があります。

Q5.相続放棄をしましたが、生命保険の受取人となっていたため、生命保険金を取得しました。相続税の申告は必要でしょうか。
相続放棄は、民法上の相続権を放棄するものです。生命保険金は民法上の相続財産ではありませんので、相続放棄の対象財産とはなりません。しかし、生命保険金は、相続税法上の相続財産(みなし相続財産)ですので、相続税法上は、相続財産を取得したとして、相続税の申告が必要となります。

Q6.相続を放棄しましたが、葬式費用を支払いました。債務控除は可能でしょうか。
可能です。

Q7.祖父が孫の大学入学金を負担しました。贈与税の課税対象でしょうか。
贈与税の課税対象とはなりません。教育資金や生活資金を通常必要と考えられる範囲で、扶養義務者が被扶養者に贈与する場合は、贈与税の非課税財産となります。よく、贈与税の教育資金一括贈与の特例と混同されている方がいられますが、当該特例は、事前に一定額を贈与し、そこから教育資金に充当するものを非課税とする特例であり、今回のようなその都度必要額を贈与し、通常必要と考えられる範囲のものについては、特例の適用をすることなく、当然に非課税となります。なお、扶養義務者は所得税法上の扶養義務者ではなく、民法上の扶養義務者(6親等内の血族及び3親等内の姻族)ですので、ご留意ください。