消費者契約法の概要と改正点(2/2)

■ 法改正の内容

● 不実告知の重要事項の範囲が拡大 「不実告知」については、重要事項の範囲が拡大されて、契約の目的となるもの以外でも、生命、身体、財産その他重要な利益について、損害または危険を回避する必要性に関する事項について不実告知があった場合は取消ができることになりました。

例えば、いずれもそのような事実はないにもかかわらず、「タイヤの溝が大きくすり減っていてこのまま走ると危ないと言って新しいタイヤを購入させた」「パソコンがウイルスに感染していてインターネット上に情報が流出するリスクがあるといってウイルス駆除ソフトを購入させた」「このままだと2,3年後には必ず肌がボロボロになるといって化粧品を購入させた」「この資格はまもなく国家資格となって難易度が上がるため取得が困難になると言って、その資格取得のための講座の受講申し込みをさせた」などが該当します。

今回の改正では、無効となる契約条項として消費者の解除権を放棄させる条項が新設されました。例えば、携帯電話端末の販売で「いかなる理由があっても(商品に不具合があったり、契約した商品の入荷がなく受け取れなかったりした場合でも)契約後のキャンセルは一切できない」とか、進学塾の夏期講習の契約で「代金払い込み後の契約の解除は一切認められない」といった条項がこれにあてはまります。

「消費者の利益を一方的に害する条項」には、消費者の不作為によって新たな契約の意思表示をしたものとみなす条項が新たに例示されました。例えば、「購入した掃除機に注文していない健康食品が同封されていて、消費者が継続購入をしない旨の電話連絡をしない限り継続購入をするものとみなす」というものが該当します。雑誌の定期購読の契約期間が定められていて、その期間が終了しても連絡がない限り契約は更新されるという条項も無効です。

●取消権行使期間の伸長

消費者契約法ではこれまで、取り消しができるまでの期間を「消費者が誤認していたことに気付いた時や困惑を脱した時など、取り消しの原因となっていた状況が消滅した時から6ヶ月」としていました。しかし実際には、相談先がわからなかった、事業者が怖くて言い出せなかった、事業者と交渉しているうちに6ヶ月が経ってしまった、などの理由で取消権の行使期間の6ヶ月を経過してしまうケースがありました。 そこで、今回の改正では取消権の行使期間を1年に伸長し、不当な勧誘を受けた消費者の救済を図ることとしました。

●取消権を行使した消費者の返還義務

消費者契約法に基づいて取消権を行使した消費者は、原則として手元にある現物を返還すればよいと考えられます。しかし、2017年に成立し、一部を除いて2020年4月に施行される「民法の一部を改正する法律」では、消費者の返還義務の範囲を原則として原状回復としており、消費者の返還義務の範囲が広がってしまいます。そこで、取消権を行使した場合の返還義務をこれまでどおりの範囲とすることを明確にするため、今回の消費者契約法の改正では「当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う」という条項が設けられました。 例えば、特定の物質にアレルギーのある消費者が、その物質が含まれていないという事業者の不実告知でサプリメントを5箱購入し、2箱消費したところでその物質が含まれることに気づいて契約を取り消した場合、2020年に施行される改正後の民法では残った3箱だけでなく費消した2箱分の料金も返還しないといけませんが、2016年改正後の消費者契約法に従えば、残った3箱のみ返還すればよいことになります。