所得税の確定申告、よくある質問事項(2/5)
2015年も残すところ3ヵ月となり、所得税の確定申告も気になる季節となりました。そこで、確定申告についてよくある問い合わせ事項について、5回にわたって、解説してまいります。
《屋根一体型太陽光発電装置の耐用年数》
Q3.
太陽光発電装置のソーラーパネル部分を建物の屋根と一体化させたいわゆるソーラーパネル葺住宅の場合は、屋根材として使用されるソーラーパネルが、建物の一部を構成するものであることから、「建物」の耐用年数(40年など長期にわたる)を採用して減価償却をすべきものとされていますが、建物の価額から太陽光発電装置の価額を取り出して「機械」の耐用年数(17年など比較的短期)を採用して減価償却をすることは可能ですか。
A3.
屋根一体型のソーラーパネルは、屋根としての機能も有していることから、建物に組み込まれて固定資産税の課税対象とされています。そのため、減価償却計算においても、その耐用年数は、「建物」の耐用年数によることになるものと解されます。
ところで、一般的に建物といっても、「建物」と「建物附属設備」は別々に耐用年数が規定されています。そして、「建物」とは、「防水、床、外装、窓及び構造体の部分からなっていてそのいずれを欠いても建物とはなり得ないもの」と定義され、「建物附属設備」は、「建物そのものではなく、建物に取り付けられたものであって、なお建物の機能を高めるもの」とされており、これらは区別して減価償却を行う必要があるとされています。
ここで、太陽光発電設備は、屋根としての機能も有する「ソーラーパネル」と、機械装置としての「太陽光発電設備」に区分できます。屋根としてのソーラーパネル部分については、その部分がないと建物とはなり得ませんので建物として減価償却するのは致し方ありませんが、機械装置部分と合理的に区分できれば、機械装置部分については、機械装置の耐用年数を採用することができます。
《棚卸資産の売買に係る所得税法56条の適用について》
Q4.
酒類等販売業を営む甲は、生計を一にしている子乙に事業承継を行うため、保有していた棚卸資産を原価で乙に売却しました。
同一生計である甲・乙間の売買取引は所得税法56条が適用され、同一生計親族間の取引のため甲及び乙の必要経費・収入ともになかったものとして所得を計算するということになると思われますが、甲乙間の取引で実際に金銭のやりとりをしているときの課税関係はどのようになりますか。
A4.
まず所得税法56条について、要件として、「事業に従事したことその他の事由」が必要ですので、事業承継のために、棚卸資産の譲渡を受けた場合は、この場合に該当しません。よって、所得税法56条は適用されず、甲は売上を計上し、乙は仕入を計上することになります。通常の第三者取引と同じように考えればよいのです。
ただ注意していただきたいのは、棚卸資産を贈与したり、市場価格より著しく低廉な価格で譲渡したりすると、贈与税が課税されるとともに、所得税法40条により、市場価格で売却したものとして、売上が計上されることになりますので、ご留意ください。