所得税の確定申告、よくある質問事項(3/5)
2015年も残すところ3ヵ月となり、所得税の確定申告も気になる季節となりました。そこで、確定申告についてよくある問い合わせ事項について、5回にわたって、解説してまいります。
《源泉所得税の源泉徴収義務の発生時期について》
Q5.
弁護士Aは、相続開始に伴う法律相談を受け、その報酬を平成27年12月にBに請求したところ、翌年2月5日にBから報酬の支払いが行われました。
Bは会社員ですが、賃貸不動産を相続したことにより、平成28年1月、青色申告承認申請の届出及び青色事業専従者給与の届出のほか、給与支払事務所の開設届を行い、青色事業専従者給与の支払と所得税の源泉徴収を開始しました。
この場合、Bは平成27年中、源泉徴収の義務はありませんが、平成28年2月5日に支払った弁護士報酬について、源泉徴収義務は生じるのでしょうか。
A5.
所得税法に規定する弁護士報酬等の源泉徴収義務は、「支払いをする者は、その支払いの際、所得税を徴収し……」と規定されていますので、基本的には実際に当該報酬が支払われるときに源泉徴収義務が生じます。
しかし、給与等につき所得税を徴収する義務のない個人から支払われるものについては、源泉徴収義務がないことになっていますので、源泉徴収義務適用のタイミングが問題となります。
この点、「~支払をする者が当該個人に該当するかどうかは、当該報酬、料金等を支払うべき日の現況により判定する」とされてり、「支払った日の現況」とはされていません。ところで、弁護士が売上を計上すべき日(収入すべき日)は、事業所得の計算の原則通り、人的役務提供を完了した日、とされています。
そうすると、この「支払うべき日」とは、報酬に係る役務提供が完了し、Bに対してその請求が行われた日と解するのが相当と思われますので、報酬の支払いが何らかの事情で遅延し、翌年に支払われたというような場合にあっては、Bが「支払うべき日」すなわち本件報酬が請求された日においてB自身源泉徴収義務がない場合は、この報酬についても源泉徴収義務がないことになります。よって、この場合、源泉徴収税額を控除せず、報酬の全額を弁護士に支払うのが正確な処理になります。