所得税の確定申告、よくある質問事項(5/5)

 2015年も残すところ2ヵ月となり、所得税の確定申告も気になる季節となりました。そこで、確定申告についてよくある問い合わせ事項について、5回にわたって、解説してまいります。

 

《医療費控除(人間ドック費用について)》

Q8.

 夫と妻が人間ドックで受信した結果、夫婦ともに体内にピロリ菌のいる疑いがもたれ、再検査がされました。その結果、実際にピロリ菌がいることが判明したことから専門医に通院して除菌の治療を受け、夫は1回目で完全に除菌されたことが確認されましたが、妻のほうは1度目の治療では完全に除菌されたとまでには至らず、現在も経過観察中となっています。人間ドックの診断の結果、重大な病気が発見され、引き続きその治療を受けることとなった場合には、医療費控除の対象とされることになるものと思われますが、このようなケースの場合にも該当しますか。

 

A8.

 人間ドック費用は、健康診断としての費用ですので、これ自体は医療費控除の対象とはなりませんが、これによって重大な病気が発見され、引き続きその病気の治療を受けることとなった場合には、その人間ドック費用も医療費控除の対象になります。

 ところで、ピロリ菌の感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃がんなどの発生につながることが報告されているようですが、ピロリ菌の感染によって上記疾患が必ず発症するというものでもなく、また、ピロリ菌は胃に対しては悪影響を及ぼす傍ら、食道に対してはむしろ疾患を防御している可能性が議論されているという説明がなされています。

 そうしますと、ピロリ菌の感染が判明した時点では、まだ慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの病気に罹患したわけではありませんので、人間ドックでの健康診断によってピロリ菌の感染が判明したことをもって、「重大な病気が発見」されたことにはならないように思われます。

 したがって、ご質問の場合の人間ドック費用につきましては、医療費控除の対象とはならないものと考えられます。