知っておきたい戸籍のキホン(1/2)

 婚姻や相続の際に使われる戸籍。戸籍とは、どのようなものなのでしょうか。今回は、戸籍について、基本的な論点を取り上げ、解説していきたいと思います。

 

《戸籍とは》

戸籍とは、日本国民が生まれてから死亡するまでの親族関係やその変動(出生・親子・養子縁組・婚姻・離婚・死亡など)を公に証明するもので、一定の親族ごとに本籍地を管轄する市区町村で管理されています。本籍地は日本国中どこでも自由に選ぶことができ、変更(転籍といいます)も自由で、出生地や住所地と異なっていても問題ありません。なお、日本国民の親族関係の証明になりますので、日本国籍のない人に戸籍はありません。

 

《戸籍と住民票の違い》

住民票は、住民の住所の異動や世帯人員の構成を記録するもので、世帯(「世帯」とは、居住と生計を共にする社会生活上の単位をいいます)ごとに個人を単位として式町村で管理されています。これに対し、戸籍は筆頭者をはじめとして、その戸籍に記載されている者全員で1つの単位となり、出生・死亡・婚姻などの身分事項を記録するものです。戸籍には本籍地は記載されますが、住所地は記載されません。

 

《戸籍制度の変遷》

日本の戸籍は明治5年の壬申戸籍に始まり、現在収集可能なものとしては明治19年式、明治31年式、大正4年式、昭和23年式、平成6年式の5つがあります。

大正4年式戸籍までは戸主を中心とした「家」を1つの単位として構成されていました。「家」の戸主には、婚姻や養子縁組、離縁などに対する同意権があり、個人の身分行為を含む家族の法律は「家」を単位としていたからです。それが戦後、新憲法の「個人の尊重」の理念により戸籍法も改正され、昭和23年式戸籍において「1つの夫婦と氏を同じくする子」が単位となりました。平成6年式戸籍は、紙形式・縦書きであった昭和23年式戸籍を電子化・横書きに改製したものです。戸籍は現在ではほとんどの市区町村で電子化されていますが、電子化されていない市区町村では、昭和23年式戸籍が現役で使われています。

 

《戸籍の記載単位の家族》

 現行法の戸籍では、1つの戸籍に記載される親族の範囲を次の3つに定めています。

  •  1組の夫婦およびこれと氏を同じくする子

夫婦で新戸籍を作る場合、夫婦のいずれかの氏を称するが、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻が筆頭者となり編製されます。その夫婦に子が出生すると親の戸籍に入り、子が結婚をすると親の戸籍から出て新たに戸籍を編製します。

 

  •  新たに戸籍を編製した単身者およびこれと氏を同じくする子

・未婚の者とその子で新戸籍を編製する(三代連なる戸籍は作れないため、親・未婚

の者・未婚の者の子三代が1つの戸籍に入ることはできません)。

・分籍による編製(成人した子は、親子の戸籍から分かれて新たに単独の戸籍を作る

ことができます)。

・離婚による新戸籍編製(離婚の際は原則として婚姻前の戸籍に戻りますが、新たに

新戸籍を編製することもできます)。

 

  •  外国人と婚姻をした者およびこれと氏を同じくする子

外国人には戸籍がないため、外国人と婚姻した日本国籍者については単身の戸籍が編製されます。その者の外国人配偶者のことは身分事項欄に記載されます。