知っておきたい相続登記の基礎知識(2/2)
不動産を所有していた者が亡くなり相続が開始した後、遺産分割協議が成立すれば、不動産を取得する者が確定します。ただし、何もしないまま放置すれば不都合が生じる場合も考えられる。今回は、不動産の所有者が亡くなった場合にその不動産の登記名義を被相続人から相続人へ名義変更を行う「相続登記」の意義や、登記におけるポイントを考察していきます。
★相続登記の種類とポイント(続き)
(1)遺言状に基づく相続・遺贈による登記
遺言状がある場合は、その内容に従い相続あるいは遺贈の登記をすることになりますが、遺言状の記載内容により、次の①~③のように登記原因(登記記録に記載される原因)と登記申請者がそれぞれ異なります。なお、公正証書遺言であれば家庭裁判所の検認を経ることなく、すぐに登記手続きを進められるが、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認が必要となるため、登記手続きに入るまで時間がかかることがあります。
① 相続人に「相続」させる
相続人は単独で申請できます。
② 相続人に「遺贈」する
受遺者と、登記義務者である遺言執行者との共同申請となります。
遺贈の場合は、「相続」の場合とは異なり、遺言執行者が登記義務者となります。遺言執行者が指定されていない場合は相続人全員が登記義務者となるが、煩雑さを軽減したい場合や他の相続人が非協力的であることに備えたい場合は、遺言執行者を指定しておくほうがよいと思われます。
③ 相続人以外に「遺贈」
受遺者と、登記義務者である遺言執行者との共同申請となります。
ちなみに、相続人以外に「相続させる」遺言はできません。また、遺贈には「財産の3分の1を遺贈する」のように割合を示した「包括遺産」、「甲土地を遺贈する」というように特定の財産を指定した「特定遺贈」があります。
(2)法定相続分による共同相続登記
遺産分割協議が完了していない状態では、各相続人は法定相続分どおりの割合で共同相続している共同相続人です。この場合、共同相続人全員で共同申請するのが原則ですが、前述のとおり共同相続人のうちの1人が申請人となることも可能です。ただし、自分の持分だけを申請することは認められず、全員分の申請を行わなければなりません。
(3)遺産分割協議による相続登記
不動産を相続する場合、「争族」を避けるため、複数の相続人で共有するのではなく、相続人の1人に相続させることがあります。法定相続分と異なる割合で資産を分割することになれば遺産分割協議が必要となりますが、法定相続分による相続登記と遺産分割のタイミングによって、登記の原因が異なります。先に共同相続登記をしていて、遺産分割後に持分変更の内容を登記する場合は、登記の原因は「遺産分割」となり、持分が増加する相続人が登記権利者、持分が減少する相続人が登記義務者として共同申請します。
なお、相続登記は、登記の原因により登録免許税や不動産税が異なります。