改めて振り返る「居住用財産の譲渡の特例」(2/2)
今回は、前回の続きとして、「居住用財産の譲渡の特例」のいくつかについて、個別でみていこうと思います。
(1)3,000万円の特別控除
居住用財産を譲渡した場合において、一定の要件を満たしたときは、その譲渡益から3,000万円を控除することができます。その譲渡益が3,000万円以内の場合には所得税、住民税はかかりません。3,000万円を控除しても譲渡益が残る場合には、残った譲渡益に対して、その所有期間に該当する税率で課税されます。
3,000万円の特別控除は、所有期間にかかわらず適用される点が他の特例と異なります。所得制限もありません。
(2)軽減税率の特例
譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得について、3,000万円の特別控除後の譲渡益に対して、所得税10%、住民税4%の軽減税率が適用されます。なお、譲渡益が6,000万円以下の部分において適用され、それを超える部分については、前述の長期譲渡所得の税率で課税されます。
(3)特定の居住用財産の買い換えの特例
一定の要件のもと、譲渡した年の1月1日における所有期間が19年を超える居住用財産を譲渡し、所定の期限までに新たに居住用財産を取得し、居住の用に供し、または供する見込みである場合は、徳的の居住用財産の買換の特例を適用できます。(平成29年12月31日までの時限措置)譲渡による収入のうち、買換資産の購入に充てられた部分についての譲渡益への課税は、買換資産の譲渡時に繰り延べられます。
例えば、譲渡収入が5,000万円で、買換資産が5,000万円以上だった場合には、売却益が出ても課税は繰り延べられます。一方、買換資産が4,000万円だった場合には、譲渡収入と買換資産の価格の差額である、譲渡収入1,000万円に対応する譲渡益に課税されます。なお、買換資産の取得費は、譲渡資産の取得費を引く継ぐことになりますが、取得時期は実際の取得時期となる点に注意が必要です。
適用要件は、譲渡資産には所有期間の他に居住期間が10年以上、譲渡対価が1億円以下であることなどがあります。買換資産には建物の床面積は50㎡以上、土地は500㎡以下などがあります。
なお、3,000万円の特別控除、軽減税率の特例と併用できない点には注意をしましょう。
(4)居住者財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除
東京に家を購入したが、転勤で大阪に行くことになったため、東京の家を売却し、新たに大阪で家を購入しました。しかし、譲渡損失がでてしまいました。そんなときに利用したい特例です。
譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡し、譲渡の年の前年1月1日からその譲渡の年の翌年12月31日までに要件を満たす居住用財産を取得し、取得の年の翌年12月31日までに居住の用に供した場合または供する見込みである等の要件を満たした場合、その譲渡資産に係る譲渡損失は、譲渡した年の損益通算およびその年の翌年以降3年間の各年の総所得金額等からの繰越し控除が、認められます(平成29年12月31日までの時限措置)。
買換資産の適用要件には、居住の用に供する部分の床面積が50㎡以上であること、買換資産を取得した年の年末において償還期間10年以上の住宅借入金等の残高を有していること、などがあります。また、繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下でなければならないといった所得制限もあります。
(5)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
住宅ローンの返済が厳しくなり、自宅を手放さなければならなくなった人の救済措置としての役割を担っているのがこの特例です。
譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡しても、住宅ローンを返済しきれない場合、譲渡損失のうち、一定額をその年の損益通算およびその年の翌年以降3年間の各年の総所得金額等から繰り越し控除することが認められます。(平成29年12月31日までの時限措置)なお、この特例に買換えの要件はありません。
損益通算および繰越し控除が認められる金額は、住宅ローンの残高から譲渡自家を差し引いた金額と、譲渡損失の額のいずれか少ない金額が限度となる。
適用要件には、譲渡に係る契約日の前日に償還期間10年以上の住宅借入金等を有していること、繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下でなければならないといった所得制限もあります。