公正証書遺言作成の流れ(1/2)
公証役場で遺言書を作成するときには、公証役場に行って公証人に遺言内容を口授するケースと、専門家を間に入れ、その専門家と内容を検討後、原案を公証役場に持ち込み、作成するケースがあります。全体の流れを知るために、ケース別の流れや必要書類について説明します。今回は、公証役場で口授して作成するケースを検討します。
■公証役場で口授して作成するケース
公正証書遺言書の作成の概要は以下のとおりです。
(1)遺言者が遺言原案を作成する
財産目録、遺言者の意思、相続上の懸念事項などを整理し、原案を作成します。
(2)証人予定者を決める
作成時に立ち会う証人2名以上が必要となりますが、「未成年者」、「推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族」、「公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人」は証人または立会人になることができません。
直接の利害関係者のみならず、その配偶者や直系血族にいたるまで証人になれないため、証人を用意するのが困難な場合もあります。その場合は公証役場に頼んで証人を紹介してもらうことも可能です。
証人を2人確保できない場合には公正証書遺言を作成できず、証人になれない者が証人となり遺言を作成した場合は遺言が無効となりますので、十分注意して下さい。
(3)公証人との打合わせに必要な書類を用意する
① 遺言者本人の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内)
② 相続人に相続させる場合、遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本(発行後3ヵ月以内)
③ 相続人以外の人に財産を遺贈する場合、その人の住民票
④ 財産特定のため、預金通帳、有価証券の写しなど
⑤ 不動産が含まれている場合は、登記事項証明書および固定資産の評価証明書など
⑥ 証人予定者の名前、住所、生年月日および職業をメモしたものなど
(4)公証役場に行き、原案をもとに公証人と確認、検討する
本人の意思をそのまま遺言に記すと法律上支障が生じる可能性がある場合、上手な書き方などを公証人がアドバイスしてくれます。
(例)預金について具体的な金額まで記載しようとしたところ、「今後の変動がある から口座の特定までにとどめておいた方がよい」など。
また、公証人から求められた追加資料があれば用意し、提出します。
(5)公証役場で公正証書遺言書を作成する。
① 証人2名以上立会いのもと、遺言者が口授し、公証人が筆記する。
② 公証人が筆記の内容を遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させる。
③ 誤りなどがなければ、遺言者、証人、公証人が署名・捺印する(遺言者は実印、証人は認め印可)
(6)原本は公証役場に保管、遺言者は正本、謄本を受取、手数料を支払う。
この間、少なくとも2回以上のやりとりがあるため、2週間~1ヵ月程度の余裕は見ておいたほうがよいでしょう。
また、口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人および証人の前で、遺言の趣旨を通訳人により申述し、または自書することで、口授に代えることができます。同様に、耳が聞こえない者が公正証書によって遺言を作成する場合には、公証人は、筆記した内容を通訳人の通訳または閲覧により遺言者または証人に伝えて、読み聞かせに代えることができるので、必要に応じて公証人に相談してください。
なお、昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言であれば、公正証書遺言検索システムに登録されるので、相続人は公正証書遺言の存在の有無を確認できます。