円滑な相続のために知っておきたい手続き(2/2)
■相続に関する情報収集(2)
次に遺言書の有無についてですが、被相続人が明かしていない場合、相続人が遺言書はないものと思って相続を進めてしまうことを避けるため、遺言書の確認は速やかに行うようにしてください。公正証書遺言については、昭和64年1月1日以降、「公正証書遺言検索システム」により、どこの公証役場でも検索を依頼することができます。ただし、そこでは存在の確認にとどまってしまうため、遺言書があった場合は保管してある公証役場に出向き、公正証書遺言の謄本の請求が必要です。
一方、自筆証書遺言の場合は、生前に存在を知らされていなければ探すほかありません。知人や親しかった人に尋ねてみる必要もあるかもしれません。あるいは、銀行の貸金庫に保管されている場合、貸金庫の契約者(この場合は被相続人)の代理人登録をしていれば死亡前に遺言書の存在を知ることも可能ですが、そうでなければ貸金庫を契約している金融機関に相続人全員、もしくは相続人全員の委任状を預かった相続人代表が出向き、所定の手続きを経て貸金庫を確認することになります。ただし、この場合は相続人が多いほど必要な書類や印鑑などの収集はもちろん、金融機関側の確認などもあるため、相応の時間がかかってしまいます。なお、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認が必要となる為、見つけたとしても絶対に開封しないようにしましょう。
相続人がすべての財産を相続するか否かを選択するポイントとして負債状況を把握することも重要です。住宅ローンの有無が不明なことは少ないですが、個人的な借金など家族にも明らかにしていないものがないとは断定できません。借用書の有無や、被相続人の銀行口座からの定期的な振込の有無は確認しておきましょう。また、自動引き落としされているようなものは、遺族からの申し出後、口座が凍結され通常であれば引き落としできないため、何らかの催促があるはずです。
公共料金や固定電話、インターネット、NHK受信契約など家庭のインフラに係るものやクレジットカード、運転免許証、パスポートなど実態が変わらないので失念しがちですが、名義変更や解約、返却などは一覧表を作成して、一つ一つ確認をしながら行うと効率的に作業ができます。
通常3ヵ月程度様子をみるとおおよその判断は可能です。
念のため信用情報機関での確認も行っておくとよいでしょう。
■遺族の新たな生活に移行するための手続き
遺族の新たな生活開始に当たって必要なことは、社会保険関連の手続きとライフラインの継承です。公的年金においては年金受給権者死亡届(日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は省略可能です)の提出と未支給の年金請求のほか、手続きの受付後支給開始まで通常3ヵ月程度はかかる遺族年金も、早めの受給手続きを行いましょう。公的医療保険においては健康保険証の返還が必要になります。国民健康保険に加入している世帯主が死亡した場合は世帯主変更届出、国民健康保険以外の健康保険の被保険者が死亡した場合は、被扶養者であった遺族は別の健康保険に加入する手続きが必要となります。また、本人死亡後でも高額医療費は請求することが可能です。