税務調査の対象となりやすい法人とは?(2/3)

■ 税務調査に備えてすべきこと

では、税務調査に備えてどのようなことを注意していればよいのでしょうか。「正しく記帳されているか」「記帳内容どおりに申告されているか」など、ポイントを押さえながら確認してみましょう。

 1.計上漏れに注意する

ごく基本的なことですが「記帳内容の間違い」には気をつけましょう。とくに「売上や経費の計上漏れ」は起こりがちで、税務調査ではその点を指摘されることがあります。日頃から帳簿内容と売上伝票、領収書などの金額が一致するように管理しておきましょう。

そのためには普段から伝票や領収書をこまめに記帳する習慣をつけておくことが重要です。あるいは人件費を管理するためのタイムレコーダーを導入したり、定期的に資産を棚卸ししたりしておくことも効果的でしょう。

2.否認されやすい科目に注意する

勘定科目のなかには税務調査で否認されやすい内容のものがあります。特に売掛金、役員報酬、外注費、海外視察費などは否認されるケースは多いため、計上できる内容を正しく把握しておきましょう。

3.売掛金

税務調査では、売掛金の金額と計上の時期が正しいかがチェックポイントとなります。よくある指摘事項として「12月の売上分が1月に入金される場合に、その売上を1月に計上している」というものです。「12月の売上分は12月に計上する」のが正しく、これを期ずれといいます。

また、売掛金で疑わしい事項があった場合、取引先に対して「反面調査」が行われることもあります。売掛金があるからには、取引先には同内容の買掛金が存在するはずです。そして、会計処理に間違いがなければ、売掛金と買掛金の残高は一致するはずです。そこで反面調査を実施することで取引先の買掛金残高を調べ、本調査での売掛金の裏付けを取るのです。

4.貸倒損失

貸倒損失(貸倒金)とは、売掛金などの金銭債権を回収できなくなった場合に、その金額を損金として計上するための勘定科目です。たとえば、取引先が倒産してしまうとその債権は回収できません。そういったときに「貸倒損失」を使って、損金として計上するのです。

ただし、貸倒損失を損金算入できるのは、取引先が会社更生法などの手続きを受けて金銭債権が切り捨てられている場合や債権者の資産状況などから全額が回収できないと判断できる場合に限られますので、適正な判断が必要とされます。

もしこの条件に該当しないのに損金として算入していると、税務調査で否定される可能性があります。

5.役員報酬

役員報酬は自由に損金算入してしまうと「利益額を調整する」といったことができてしまいます。そのため、損金算入できる役員報酬には一定のルールが設けられており、以下の3つに限られています。

・定期同額給与:毎月支払われるもの(固定給)

・事前確定届出給与:一定時期に支給されるもの(ボーナス)

・利益連動給与:利益などに応じて支給されるもの(出来高)

このうち定期同額給与に関しては、事業年度開始から3カ月以内に株式総会を開催して、役員報酬を決定する必要がありますし、事前確定届出給与に関しては「株主総会などで支給を決めた日から1か月以内」もしくは「会計期間開始の日から4か月以内」に税務署へ届け出る必要があります。

このように損金算入できる役員報酬の種類や条件は決まっているので、きちんとこれらを守るようにしましょう。

6.外注費

税務調査では、契約内容や業務実態によっては外注費としての損金が否認され、「給与」と見なされるケースがあります。国税庁の「法令解釈通達」では、以下のような項目を定めており、税務調査においてはこれらの要件や契約内容を基準に総合的に判断するとされています。

・別の作業員が業務をしたり、役務を提供したりできるか

・作業時間の指定や時間的な拘束を受けたりするか

・作業内容・作業方法について指揮監督を受けているか

・納品していない成果物が滅失しても報酬を請求できるか

・作業者のために材料や道具などを用意しているか

なお、外注費で処理していたものが給与と見なされた場合は、所得税の源泉徴収や社会保険料の手続きなどを行う必要があるほか、消費税も追加で納付しなければなりません。