住宅取得関連税制について

 昨年度の税制改正において、消費税の10%への引き上げ時期が平成27年10月から平成29年4月に先延ばしされたことに伴い、消費税率引き上げによる住宅投資への影響の平準化及び緩和のための施策である住宅ローン減税等の措置について、平成29年末までの措置とされていましたが、消費税率10%への引き上げ時期の変更を踏まえ、その適用期限を1年延長することとしました。

 また、住宅ローンを利用せず、全額自己資金で住宅を建てる場合であっても、所得税額控除の適用を受けることができる制度があります。

 そこで、住宅の新築・取得時期に適用できる特別控除および住宅のバリアフリー改修・省エネ改修・耐震改修工事の際に適用できる特別控除について確認し、住宅ローン等を利用した場合の併用ができるかどうかについて説明いたします。

 

《認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除》

 居住者が、自己資金により「認定長期優良住宅」の新築・取得及び家屋に伴う敷地の取得をする場合、または、「認定低炭素住宅」の新築・所得および家屋に伴う敷地の取得をする場合、新築または取得の日から6カ月以内に居住するなど一定の要件の下で、所得税額の特別控除を受けることができます。

 その計算方法は下記のとおりとなっていますが、標準的な費用の限度額は650万円となっており、この金額に10%を掛けるので、控除額は最大65万円となります。

 

◆所得税額控除額=標準的な費用の額×10%

◆1㎡あたりの標準的な性能評価費用(43,800円)×住宅の床面積(㎡)

 

 上記控除額が、控除期間は居住年のみで、居住年において所得税額から控除しきれない金額がある場合には、その翌年分の所得税額から控除することができます。ただし、それも、翌年の所得税額を限度としています。

 

《住宅改修の際に適用される所得税控除》

 

◆バリアフリー改修促進税制

 バリアフリー改修促進税制の適用対象者は、①年齢50歳以上の者、②介護保険法に規定する要介護または要支援認定を受けている者、③所得税法の障害者である者、④②または③に該当する者または年齢65歳以上の親族との同居を常況としている者、のいずれかです。

 対象工事は、①階段の勾配の緩和、②便所・浴室の改良、③手すりの設置、④屋内の段差解消、⑤廊下の拡幅、⑥引き戸への取替え工事、⑦床表面の滑り止め化、であり、標準的な費用の額(地方公共団体等から交付されて充てられる補助金等を除く)が50万円超のものが対象となります。また、自己の居住の用に供される部分の工事費用の額が、増改築の工事費用の総額の2分の1以上であることが必要です。

 所得税額の控除金額は、標準的な費用×10%で計算されるが、費用の限度額は200万円であることから、控除限度額は20万円となります。

 なお、その年の前年以前3年分について適用を受けている場合には適用できません。

 

◆省エネ改修促進税制

 省エネ改修促進税制の対象工事は、居室のすべての窓の改修工事、またはそれと併せて行う床、天井、壁の断熱工事で、改修部位がいずれも平成25年基準以上の省エネ性能または断熱性能となるものです。また、上記の工事が行われる構造又は設備と一体となって効用を果たす一定の太陽光発電設備の取替えまたは取付けに係る工事などである。標準的な費用の額から交付された補助金等を控除したものが50万円以上だと対象になります。

 所得税額の税額控除は、標準的な費用×10%で計算されますが、費用の限度額は250万円(太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は350万円)となり、控除限度額は25万円(太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は35万円)となります。

 

◆耐震改修促進税制

 耐震改修促進税制の対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であり、耐震改修した家屋が現行の耐震基準に適合するものである等の要件を満たす場合に適用されます。住宅耐震改修に係る耐震工事の標準的な費用の額から交付された補助金等を控除したものが対象となります。所得税の控除金額は、標準的な費用×10%で計算されますが、費用の限度額は250万円なので、控除限度額は25万円となります。

 

◆複合的な適用関係

 住宅の改修工事に係る所得税の特別控除において、上記のとおり3つの改修工事がありますが、これらを併用して行うこともあります。バリアフリー改修工事と省エネ改修工事の両方を行った場合の控除の限度額が廃止されたため、控除額はそれぞれの改修工事にかかる限度額の合計額となります。つまり、すべての改修工事を行った場合には、70万円(太陽光発電設備設置工事も行った場合は80万円)が控除限度額となります。

 なお、住宅ローン等を利用し、自己の住宅の用に供する家屋について耐震改修工事を行った場合は、所得税額の特別控除と住宅ローン控除との併用が可能となっております。これ以外は併用ができないため、いずれを選択したほうが有利になるか判断が必要となりますが、控除期間や各期間の住宅ローンの年末残高を考慮に入れて、判断してください。