寄附金と広告宣伝費・交際費との区分の考え方について

【質問】
砂利採取製造業を営むA社は、数年前から原石の採取を行い今後も採取する予定である原石採取現場があるB町に対し、通学路や住宅街の横断歩道に設置する道路横断用旗入器40個(横断旗200個を含む)を100万円で購入して寄贈しました。寄贈した横断旗入器と横断旗には、A社の社名を入れてあり、寄贈の目的は、原石採取交渉の相手である地主や原石採取現場近隣の地元の人に会社名を知ってもらう宣伝効果及び砂利運搬のため近所の道路を大型ダンプが通ることに対する苦情対策としての近隣住民との良好な関係構築等です。なお、B町とA社との関係は、砂利採取現場の近隣市道を使用させてもらうのにB町から許可をもらう程度であり、B町に対して売上高を計上できるような取引関係はありません。この道路横断用旗入器(横断旗を含む)を購入した費用はどのような勘定科目で処理すればよいでしょうか。

【回答】
 法人税法では、「寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」とされ、広告宣伝費や交際費に該当する費用は寄付金から除かれています。
 広告宣伝費とは、不特定多数の者に対する広告宣伝的効果を意図するものと解されています。また、税務上の交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの、定義されています。
 更に、法人が損金として支出した寄附金でも、例えば、社長の出身地や出身校に対する寄附金など、その法人の役員等が個人として負担すべきものと認められるものは、その負担すべき者に対する給与として取り扱われます。
 なお、法人税法上、国又は地方公共団体(以下「国等」といいます。)に対する寄附金は、損金不算入の対象となる寄附金の額から除外されており、全額が損金算入となります。この場合の国等に対する寄附金とは、国等において採納されるものをいいますので、受領者である国等より、寄附金や寄贈品等を受領した旨及び受領年月日などを証する書類の交付を受ける等、正式な採納手続を経て、最終的に国等に帰属していることが必要となります。

 お尋ねは、原石を採取して砂利を製造する砂利採取製造業を営んでいるA社が、原石の採取現場があるB町に対し、通学路や住宅街の横断歩道に設置する道路横断用旗入器40個(横断旗200個を含む)を100万円で購入して寄贈した場合の道路横断用旗入器(横断旗を含む)の購入費用の処理についてです。なお、寄贈した横断旗入器と横断旗には、A社の社名を入れてあり、寄贈の目的は、採取現場の地主や近隣住民に会社名を知ってもらう宣伝効果及び大型ダンプの通行への苦情対策としての近隣住民との良好な関係構築等とのことです。また、B町とA社との関係は、砂利採取現場の近隣市道を使用させてもらうのにB町から許可をもらう程度であり、B町に対して売上高を計上できるような取引関係はない、とのことです。
 お尋ねの道路横断用旗入器等の寄贈費用の処理については、事実認定次第となりますが、各科目を区分する基準等について順次、検討しますと、次のとおりとなります。
 まず、広告宣伝費と寄附金の区分については、広告宣伝というからには、それに相応しい媒体の選択や方法があるものと思われますので、横断旗入器と横断旗にA社の社名を入れてあり、その支出目的の一つに間接的・派生的な広告宣伝効果が認められるとしても、本件のように、媒体なり方法が社会通念上の広告宣伝行為というより地方公共団体に対する公共的な資産の贈呈・寄付行為である場合には、その主目的は資産の寄贈と判断され、広告宣伝費には該当しないものと判定されるのではないかと思われます。
 交際費と寄附金の区分については、事業関連性の有無なり強弱により判断することとなります。本件の寄贈の目的の一つは、想定される苦情対策としての近隣住民との良好な関係構築等とのことであり、具体的な損害や苦情が生じている訳ではありませんので、お尋ねのA社がB町に寄贈した道路横断用旗入器(横断旗を含む)の購入費用に係る勘定科目の処理については、B町において正式な採納手続をとってもらったうえで、全額損金算入となる国等に対する寄附金としての処理することが相当と考えられます。