給与所得者の「特定支出控除」 よくあるギモン(6/6)
最近創設された制度である、給与所得者の「特定支出控除」。サラリーマンでも、仕事上、一定の持ち出しがあるという指摘を受けてつくられた制度ですが、まだまだ浸透しているとは言い難いです。そこで、今回は、特定支出控除について、よくされる質問についてまとめたものを何回かに分けて解説していきたいと思います。
《勤務必要経費・交際費等の意義(職務上関係のある者)》
Q13.
職場の同僚が結婚することになったため、お祝いの会合を行いました。この会合のための支出は、特定支出となりますか。
A13.
交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」)のための支出(以下「交際費等」)で、その支出がその方の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされたものは、特定支出となります。
なお、特定支出となる交際費等とは、次に掲げるような性格を有する支出をいいます。
- 「接待等の相手方」が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること
- 「支出の目的」が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者との間の親睦等を密にして取引関係の円滑化を図るものであること
- 「支出の基因となる行為の形態」が、接待、供応、贈答その他これらに類するものであること
したがって、職場における同僚との親睦会や同僚の慶弔のための支出は、特定支出とはなりません。
《給与所得と雑所得等に係る支出》
Q14.
大学教授で、大学からの給与のほかに、出版社からの依頼で専門分野の論文を執筆しています。専門図書を購入し、大学の仕事と執筆の仕事の両方に使用していますが、この図書の購入費用は特定支出となりますか。
A14.
書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための支出で、その支出がその方の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされたものは、特定支出となります。
大学からの給与等のほかに執筆等により雑所得等に係る収入を得ている場合、雑所得等とされる収入金額に対応する必要経費が明確に区分できるものは、雑所得等の金額の計算上その必要経費を控除することになりますが、区分できない場合の共通の支出は、その支出額を給与所得の収入金額と雑所得等の収入金額との割合など合理的な方法により按分計算した金額が特定支出の額となります。
《給与所得控除との選択替え》
Q15.
給与所得控除を適用して確定申告書を提出した後、特定支出控除を選択した方が有利になることが判明しました。この場合、特定支出控除への選択替えはできますか。
A15.
当初給与所得控除により給与所得の金額を計算して確定申告をした後、給与所得控除額の1/2相当額を超える特定支出の支出額があることが判明した場合には、更正の請求により特定支出控除を適用することにより所得税の減額を求めることができます。