不良在庫の廃棄損で注意すべきポイント

決算直前になって、思いの外利益が出てしまった場合などに、倉庫に眠っている不良在庫のうち、今後売却の見込みがないものを処分してしまい、税金対策に充てる、ということはよく行われます。しかし、そのため、税務調査で利益調整とみなされやすく、否認されるリスクもあります。今回は、不良在庫にまつわる、注意すべきポイントについてとりあげます。

 

①在庫が税金に及ぼす影響とは

 

その事業年度の売上原価は、次の算式により計算されます。
売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 – 期末棚卸高
つまり、期末在庫が大きくなれば、反射的に売上原価が小さくなります。
これは、損金に算入される金額が少なくなる、ということを意味します。

したがって、在庫を多く抱えるということは、その金額にも税金がかかっているということになるのです。

 

②不良在庫の廃棄による税金対策

 

社内ルールとして部品の使用年数を決めている会社もあります。
また、マーケットの状況から折角購入したにもかかわらず、不良在庫になっている場合もあります。

このような場合には、思い切って廃棄損を計上する方法も、考えられます。
例えば、帳簿価額1,000万円の商品や部品を廃棄すれば、廃棄損として1,000万円がそのまま損金として計上されます。つまり、所得を圧縮できるため、税金対策としては有効となります。その他、資産内容が整理されることに伴い、財務体質が改善できるメリットもあります。

③廃棄損を計上するために準備すること

 

そのためには、①廃棄をした理由、②事業年度内に廃棄したことの証明、が必須になってきます。

①については、部品については社内ルールを整備しておくと良いでしょう。
また、商品については、税金対策のためにわざわざ購入したものを廃棄する、ということも考えにくいので、大きな論点とはならないと思われます。

問題は、②の証明です。
当事務所では、廃棄損を計上するに当たっての証明書類として、次の資料をファイリングしています

 

★ 廃棄をした棚卸資産のリスト

(商品名・購入時期・購入金額を一覧にしたもの)

 

★ 廃棄直前の写真

(倉庫にて日付入りで写真を撮っています)

 

★ 廃棄業者への引渡し時の写真

トラックに積み込んだ写真を日付入りで撮っています)

 

 廃棄業者の請求書等

 

廃棄損の計上は、かなりの確率で税務調査での論点となってきます。
これ位慎重に行っても、まだまだ追及されてくるものです。