同族会社と個人事業主に係る小規模宅地等の特例(2/2)
「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下、小規模宅地等の特例)は、相続人等による事業または居住の継続の配慮から、相続税の課税価格の計算上、一定の割合を減額する特例です。本稿では、事業の用に供されている宅地等に係る小規模宅地等の特例について、その要件や留意点を確認します。
ケース別 事業の用に供されている宅地等に係る小規模宅地等の特例と留意点ケース1
被相続人の建物を無償で借り受けている法人の事業の用に供されている宅地等を取得した場合、相続の開始の直前において、被相続人が法人に対して当該宅地上の建物を相当の対価を得て継続的に貸し付けていないことから、当該宅地等は特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等のいずれにも該当せず、小規模宅地等の特例を受けることはできません。
ケース2
宅地等を取得した者と事業を継承した者が異なる場合、相続により宅地等を取得した配偶者が、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業(飲食業)を、相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいないことから(事業継承要件を満たしていない)、原則として、特定事業用宅地等には該当せず、小規模宅地等の適用を受けることはできません。
ケース3
共有である貸家の敷地の用に供されている宅地等を取得した場合、配偶者の家屋の持分に対応する部分についても、被相続人と生計を一にする親族(配偶者)が、被相続人から無償で宅地を借り受け、当該宅地上で貸付事業を行っており、事業継続要件および保有継続要件を満たすことから、夫の家屋に対応する部分と同様に貸し付け事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けることが出来ます。
なお、財産評価上、原則として、配偶者の家屋の持分に対応する部分の土地は自用地評価となることに注意します。
ケース4
駐車場の用に供されている土地(青空駐車場)を取得した場合、小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、相続の開始の直前において、一定の建物または構築物の敷地の用に供されていることが必要です。したがって、この場合は当該駐車場にアスファルトなど構築物の設置がされておらず、小規模宅地等の適用を受けることはできません。