所得税の確定申告、よくある質問事項(4/5)

2015年も残すところ2ヵ月となり、所得税の確定申告も気になる季節となりました。そこで、確定申告についてよくある問い合わせ事項について、5回にわたって、解説してまいります。

 

《地方公共団体に寄付した土地の寄附金控除額》

 

Q6.

 今年1月、父からの相続により取得した○区○○町に所在する雑種地(以下、「本件土地」といいます。)を市に寄付することとしました。

 本件土地は、別荘用地として売り出されていたものを父が30年前に300万円で取得したものですが、バブル崩壊のあおりを受けて販売会社も倒産し、開発が途中で頓挫していることもあって現在までそのまま放置されているものです。地元の不動産業者の話では、現在の土地の時価は往時の3分の1程度ではないかといわれています。

 個人が地方公共団体に土地を寄付した場合、含み益にかかる譲渡所得に関しては非課税とされますが、寄附金の額は、買った時点の金額でしょうか、譲渡時の時価でしょうか

 また、本件土地を相続する際に要した登記費用等の諸費用が10万円、市に寄付をする際に要する所有権移転登記費用などの諸費用が10万円かかっていますが、これらの諸費用も寄附金控除の対象とされますでしょうか

 

A6.

 個人が、譲渡所得の原因となる資産を法人に贈与した場合は、その贈与のときの時価で所得税が課せされますが、国または地方公共団体等にこれらの資産を贈与した場合はその贈与はなかったものとみなされますので、この場合、所得税は課せられません。

 そして、この非課税措置を受ける場合、寄附金控除の対象となる部分は、贈与した土地の取得費並びに譲渡費用に相当する金額(=買ったときの金額)と、贈与した土地の時価のいずれか低い方となります。

 なお、譲渡所得の計算上控除される取得費には、父から相続したときにおける登記費用等10万円が含まれますし、譲渡費用には、所有権移転登記の費用10万円が含まれます。そのため、含み益がある場合は、結果として、寄附金控除の対象となることになりますが、含み損の場合は、時価が寄附金控除額となるので、寄附金控除の対象とはなりません

 

《住宅ローン控除で居住用割合を年調で変更することの可否》

 

Q7.

 平成25年に取得したマンションの1室を、居住用65%、事務所用35%として使用していますので、平成25年分の確定申告時に、借入金の年末残高に居住割合65%を乗じた金額の1%を住宅借入金等特別控除額として申告しています。

 平成26年の4月から、100%居住用として使用することになりましたので、税務署から交付を受けた「年末調整等のための住宅借入金特別控除証明書」(以下、「証明書」とします)を基に平成26年度からは、年末調整で住宅借入金特別控除を適用しようと思いましたが、同証明書では、居住用65%、事務所用35%として記載されているため、これを年末調整時にその居住用割合を100%変更して計算することはできるのでしょうか。

 

A7.

 税務署長から交付された証明書は、税務署長が調査したところに基づいて交付されるものです。居住用65%と記載された証明書というのは、税務署長の調査の結果、居住用割合65%であったという意味です。

 これを住宅借入金特別控除の当該適用者が自ら100%に変更して年末調整を受けるということは、税務署長が調査したところによって証明した内容と異なり、ひいては当該証明書を有名無実化するに等しいことになります。加えて、加えて、居住割合100%が正しいものであるか否かの調査権限が給与の支払者に与えられているものではありませんので、変更後の居住用割合100%を基に給与の支払者が年末調整を行うことができると解することはできません。

 したがって、改めて確定申告を行い、居住用割合が変更されたことを税務署長が調査したところに基づき確認できたという場合に改めて発行される証明書に基づいて以後の年末調整を行うということになるものと解されます。