知っておきたい戸籍のキホン(2/2)
婚姻や相続の際に使われる戸籍。戸籍とは、どのようなものなのでしょうか。今回は、戸籍について、基本的な論点を取り上げ、解説していきたいと思います。
《戸籍謄本と戸籍抄本》
戸籍は、届け出によって記録され、本籍地の市区町村に保管されており、その戸籍を綴ったものを戸籍簿といいます。戸籍謄本は戸籍に記載されている事項がすべて記載されたものをいい、戸籍抄本は戸籍の記載事項のうち1人の事項を証明したものをいいます。戸籍の電子化後は、戸籍謄本を戸籍の全部事項証明書、戸籍抄本を戸籍の個人事項証明書といいます。なお、慣例的には、電子化後も、「戸籍謄本」「戸籍抄本」の用語は使われています。
《除籍と除籍謄本》
除籍とは個人が婚姻や死亡などにより1つの戸籍から除かれることをいいます。電子化後の戸籍謄本では死亡や婚姻、離婚で戸籍から除かれた人は、名前のところに「除籍」と記載されますが、電子化される前の戸籍では、名前を×で消されることになります。
戸籍に記載されていた者全員がその戸籍から除籍されると、その戸籍は閉鎖され除籍簿に保存されます。除籍簿は年ごとにまとめられ150年間保存されます。ある人が亡くなった場合などに戸籍謄本に「除籍」と記載されますが、在籍者がほかにいる場合はその戸籍はあくまでも「戸籍謄本」であり、1つの戸籍に誰もいなくなった謄本を「除籍謄本」といいます。役所での戸籍の収集の際、混乱しやすい場面でもありますので、注意してください。
《改製原戸籍》
戸籍制度が改正されると、戸籍の様式などが変更され、旧戸籍から新戸籍に移記されます。このような場合、元の戸籍を改製原戸籍といい、新戸籍を現在戸籍といいます。新戸籍には元の戸籍に書かれている内容すべてが移記されるわけではありません。新戸籍には、その時点で籍のある者だけが移記されるため、改製される前に死亡や婚姻で除籍された者は改製後の新戸籍に記載されません。したがって相続があった場合、現在戸籍だけでは相続人を特定できないことが多いのです。
なお、「筆頭者と本籍地」が戸籍の見出しのような役割を持っているため、筆頭者が死亡により除籍されたとしても、筆頭者は変わらずそのまま移記されます。
《現行制度において新しく戸籍が作られるケース》
現行制度において戸籍が新しく作られるケースは大きく3通りあります。
① 改製
法改正により新様式の戸籍を作る場合
② 編製
婚姻・離婚・養子縁組などの身分変動により、新戸籍を編製する場合
③ 転籍
他の市区町村から本籍地を移動した場合
編製や転籍によって新戸籍が作られる際は、改製と同様、その時点で除籍されている者は移記されません。したがって、従前の戸籍を確認しなければ相続人を特定できません。
《戸籍の連続性》
子は出生により親の戸籍に入りますが、その後身分変動が生じると、戸籍の身分事項欄に記載されるだけの場合と、新戸籍への移記が行われる場合があります。新戸籍への移記が行われた場合、元の戸籍で移動した者が除籍されるか、戸籍自体が消除されます。元の戸籍において除籍された日と、新戸籍の改製、編製、転籍した日は連続しているため、戸籍を取り寄せる場合は日付に間断がないよう確認しなければなりません。
《第3順位の相続の場合》
第3順位の相続の場合には相続人の特定に手間がかかります。まず、被相続人の全生涯において子がいなかったことを確認します。次にその被相続人の親や祖父母等の直系尊属に相続人がいるかどうかを調べ、さらに被相続人の父母の全生涯の戸籍を収集する必要があります。被相続人の異母(異父)兄弟姉妹が存在していれば相続人となるからです。